「そろそろ、出るか。」
 残りのベーグルサンドを一気に口に頬張り、大して咀嚼しないまま、アイスコーヒーと一緒に飲み込んだ。
 彼、『町田速人』は、ファーストフード店で朝食を取っていた。
 彼はケータイの時計を確認した。液晶には『10:12』の文字が現れていた。

 ♪〜チャッチャッチャチャ〜

 突然にケータイが歌いだした。ケータイの画面には、先ほどの時計のプレートは画面端に小さく移り、着信を知らせるアニメーションが映し出された。
「おっ♪」
 町田は即、その着信を取った。画面にはアニメの他に相手先の名前が記載されていた。『香田晶子』からの着信だった。
「ぐっとも〜にん! 晶子ちゃん!」 
『遅いぞ町田。はやくこい。』
 男の声だった。
「死ね、関内。」
 ストレートな呪いの言葉を発し、電話を切った。
 刹那、直ぐにまた同じ着メロが鳴った。表示は同じく『香田晶子』。
「……ちっ。」
 しばらく無言で画面を見ていた町田であったが、また電話に出ることにした。
「おう、クソ野郎。町田様が電話に出てやったぞ。」
『あのう、香田ですけど。』
 刹那、町田の態度が一変。
「おっと!! 晶子ちんか! わりいわりい、てっきりあの偏屈部長かと思ってさ。スマン!」
 受話器の向こうから「ふぅ。」と、ため息に似た声が聞こえた。香田のものだろう。
『町田さん、ちょっと遅すぎです。もう受付は始まっていますよ。』
 受付というのは、もちろんMTGの大会である。
「大丈夫だって。受付終了は10時半だろ? 余裕で間に合うって、ははは。」
 実際は、ゆっくり歩いた場合では10時半には間に合わない位置に町田は居た。早歩きで、ちょうど間に合うといったところか。
『……。』
 電話の向こうはしばらく沈黙していたが、
『……じゃあ、できるだけ早く来てくださいね。待ってますから。』
「ん〜。晶子ちゃんが待っていてくれるなら、次元を越えてでも行くからヨ!」
 既に町田は、食べ終えたトレーを返し、ファーストフード店2階から1階に下り、そして外に出ていた。
『あ、そうだ町田さん。』
「ん?」
 町田は道を歩き出す。向かうは市の公民館。今回の決戦の場である。
『実は、茅ヶ崎さんがまだ来ていないの。』
「何? しのぶちゃんがか?」
『ええ、さっきからケータイ鳴らしているし……メールもしているけど、連絡が取れなくて。』
 道に迷っているかもしれない。香田はそう、町田に伝えた。
『もし道中、茅ヶ崎さんを見つけたら連絡くださいね。』
「ああ、つれて来てやるよ。」
『ええ、お願いします。』
 プッ。電話が切られた。
「と、言ってもね。」
 ケータイを折りたたみ、乱暴にズボンの裏ポケットに押し込む。
「これだけの人混みだぞ。人一人を偶然に見つけるなんて……」
 普通は不可能だ。休日である土曜日。駅前の通りなどは人々の群れでごった返している。
 男女の若いカップル然り、中学生の集団然り、看板を背負った人然り。
 ティッシュ配りのお兄さん然り、交通整理の警備員然り、そして。

 この暑い中、黒を基調とした服に白のブラウス。同じく黒地のものに白のレースをあしらった、ひらひらスカート。
 そして、このファッションの特長とも言える、銀の逆十字を付けた黒リボンのヘッドドレス……。

「……居た。」
 が、町田は『彼女』を見ないようにして、その場から離れようとした。
 そういった格好を好む人と、同じ『人種』と思われたくなかったから。
「あ、町田さんだ。」
 しかし、あっさり見つかった。彼女、『茅ヶ崎しのぶ』は、トコトコと人混みを避けながら 町田に近づいてきた。
 黒いリボンをひらひらと揺らしながら。
「いや〜、町田さんに出会えてよかったッスぅ。道に迷ってしまったんですよ〜わたし。」
 話し方に独特な癖、訛りがある彼女。彼女が召している、ロリっとした服装とは大きなギャップがある。
「んで、このケータイ。GPSついているやつなんスけど。ちょっと使い方が良くないらしくて。なんか同じところをグルグル回っているんですよ〜。」
 正直、町田はケータイ云々以上に、彼女の服装について聞くべきか悩んでいた。
「おい、しのぶ。」
「で、なんかこの『非通話モード』とかになって〜、元に戻らないんですよ〜。」
「聞けよ。」
「はい?」
 茅ヶ崎はケータイから目を離し、町田の顔を見上げた。
 茅ヶ崎は小柄であり、町田の顔を見るには顔を上に向ける必要があるくらいである。
「とりあえず、単刀直入に聞く。」
「はい。」
「その『服装』は何だ?」
 ああ、と茅ヶ崎は自分の服を見て、
「今、流行の服ですよ〜。ファッション誌に載ってましたよ〜。」
 どんなファッション誌だろうか。町田の頭の中に、また新たな謎が生まれてしまった。
 くるりとその場で一回転する茅ヶ崎。彼女の背格好は、実際のところ非常に似合っている。
 背が低く、肌も日焼けを殆どしていないため、まるで『お人形さん』である。
「しかし、街中でする格好ではないな。」
「えっ! そうなんすか!?」
 浮きまくっているのに気がついていないのだろうか、彼女は。
「気付け! 周りの人間をよく見てみろ! な〜んとなく変な目で見られているのに気付かないのか!?」
 さらに町田は続けた。
「お前! いつものあの地味な服はどうした!? Gパンにパーカーに眼鏡! あんなんでいいんだよ! あんなので!」
 この服に合わせたのだろうか、彼女、茅ヶ崎はいつも着用している黒縁メガネを外し、コンタクトをつけているようであった。しかも、カラーコンタクト。栗色の彼女の瞳は、今日だけブルーになっていた。髪型も、三つ編みでは無くそれを解いて、ストレ
ートにしていた。
 町田に言われ放題になってしまい、シュンと肩を下げ俯いてしまった茅ヶ崎。しかし『地味』の一言に彼女が敏感に反応した。
「な、いいじゃないっすか! 私だって、いっつも『地味地味』言われ続けてぇ! 今日はぁ横浜いくっつうから! わたしなりに研究して、お洒落してきたんっすからぁ!」
「だぁぁぁ! だったら! なんで『そっち方面』に行ってしまうんだよ!」
 街中で口論に至ってしまった、町田と茅ヶ崎。そんな彼らの行動のほうが、茅ヶ崎の服装以上に目立ってしょうがない。
 そんな白熱バトルを、町田のケータイ着メロが中断させた。
「えぇい! 誰だよ!」
 乱暴に裏ポケットからケータイを取り出し、画面を確認した。そこには『香田晶子』の名前と、
「……し、しまった……。」
 画面端の時計の表示は、『10:28』を示していた……。



「と、いうわけで遅れたのさ。」
「な〜にが『というわけ』だ。」
 登録用紙に必要事項を記載しながら、町田と関内が話していた。町田の横には茅ヶ崎が、ただ黙々と登録用紙を書き上げていた。無言でデッキリストを書いている茅ヶ崎の正面に、同じく無言で茅ヶ崎の姿を見ている『小金井結花』がいた。なぜか終始笑顔、というより、にやけた顔で。口元は緩みっぱなしだ。
 関内が、事前に2人分の受付を済ませておいたのだ。もちろん、町田たちが『来る』ことを信じての行動だ。
 町田、茅ヶ崎とも、登録用紙とデッキリストを書き終えて、本部へ提出を済ませた。
「……さて。」
 テーブルに5人が集まった。6人掛けのテーブルである。中央の関内が手を組み、話し始めた。
「さっきも話したけど、今回の目標は『上位入賞』。そして『廃部の徹底阻止』。」
 いつもの関内は、其処にはいなかった。普段は見せない真剣な目。恐怖さえ感じられた。
「おっけいおっけい。要するに『勝て』ってことだろ?」
 『町田速人』はリラックスしている。
「ま、俺は2回戦後ドロップだから無理だけどね。流石に、授業の出席日数がマズイ。」
 つまり町田は、『午後から学校の補習にでるから無理』と言っているのだ。他の皆も、このことは聞いていた。
「ええ大丈夫です。私、町田さんには全く期待していませんから。」
 白ワンピースに白のつば広帽子を被った『香田晶子』が、町田の斜向かいから挑発した。
「お? 俺の補習のこと気にしてくれてるの? うれしいねぇ。」
「誰も心配なんてしてませんよ! 嫌味を言ったんです私は!!」
 バンと机を叩き、香田は勢いよく立ち上がった。そしてそのまま香田と町田は口論へと発展していった。といっても、町田が香田に対しふざけているだけであったが。
「……。」
 関内は頭を抱えた。
 せっかく自分が至極真面目な話をしているのに、
 何故こうも、
 うちの部活動は纏まりが無いのだろうか、と。

「秩序のかけらも無いな、同好会の面々よ。」
 5人が集まっている脇から、メガネをかけた男が言葉をかけた。
 生徒会書記であり、会長の忠実な部下。『大木』だった。

 香田は、
「勝手に留年してしまえばいいんですよ! さあ! もう一年高校生活でも満喫してくださいな!!」
 そして町田。
「お! つまり晶子ちんは、俺にまだ学校に居てくれてほしいと! うれしいねぇ。俺も晶子ちんと離れ離れになるのは嫌だったし、これはちょうどいいかも!」
 さらに香田。
「があああ!!!! そんな気持ちは毛頭ない!! 私は嫌味を言っているんです!!」
 頭を掻き毟りながら反論していた。
 関内は、机に突っ伏し、
「はぁぁぁ…。もう嫌だ…。」
と、香田、町田の口論に胃を痛くし、
 小金井は、茅ヶ崎しのぶのほうを見ながら
「……お人形さん……。可愛い…・・・。」
 と、今にも持ち帰って添い寝を始めてしまいそうな位の、物欲しそうな目で茅ヶ崎を見ており、
 茅ヶ崎はその視線に気付いてか気付かずか、
「……寒気が……。冷房が効きすぎっすかねえ。」
 と独り言。

(お前ら……揃いも揃って、俺を無視しやがって……。)
 大木のメガネの奥底。何か光るものが、流れた。

「と、冗談はこれくらいにして、と。」
 町田は口論を止め、大木のほうを向いた。
「えっ! 冗談だったの!?」
 真剣に口論していたと思っていた香田晶子は、肩透かしを食らったようになってしまった。
「よ! お久しぶりだなぁ、大木。」
「ふ、よくも抜け抜けと。裏切り者の町田。」
 大木は右手中指でメガネのずれを直した。彼の癖であるが、正面から見るとなんとなく、見下されたように感じてしまう動きであり、町田はそんな大木が嫌いだった。
「裏切ってねえって。元から、会長の命に従ったつもりは無いんでね。つまり最初から、あんたらの仲間じゃなかった、ってことだろ。」
「ふん、屁理屈を。」
 まあいい。そういって大木は、関内のほうを向いた。関内は既に立ち直っていた。
「せいぜい、頑張って下さいね、マジックザギャザリング同好会諸君。」
 同好会全員に言われるべき言葉であったが、大木はあえて、関内に向かって述べた。
「応援の言葉として、素直に受け取っておくよ。」
 関内はさらりと、大木の言葉を流した。返しに関内は、大木に質問した。
「大木、『他の生徒会員はどこだ』。」
 大木以外に、生徒会メンバーがいないのだ。学校で見たことのある生徒会員は、1人も居ない。
 ふふっ。と大木は笑い、
「さてね、今回は、会長が自ら選んだ方々を、『生徒会』として『派遣』なさっている。全員が初対面だろうね。」
 生徒会長というのは一体どれだけの権威と、どれだけの面識を持っているのだろう。ギャザのプレイヤーを『派遣』してしまうほどなのだ、彼は。
「あのう、大木さん。」
 テーブル奥から挙手が。『小金井結花』が、手を上げていた。
「なんですか? 小金井さん」
 まるで先生宜しく、大木が小金井を指差す。つられてか、結花も席を立ち、指名された生徒のように質問を投げかけた。
「これって、対戦相手って、完全にランダムですよね?」
 ああ、と、大木の代わりに、関内が相槌を打った。
「初戦で当たらなくても……まあ、順当に勝ち進めば、最後は当たるかもしれませんが。でも、場合によっては、『生徒会全員が初戦で対戦! 同好会も全員初戦でばったり!!』 なあんてことも……。」
「……会長は、本当にすごい力をお持ちだ。」
 回答にならない回答を、大木がした。どういうことだろう、という疑問が生まれ、小金井は質問を続けた。
「もしかして、『初戦で全員、生徒会に当たるように、大会を買収』しているとか、ですか?」
「いや、それは断じてない。」
 即答で、大木が否定した。が、次に大木が答えた言葉は、全く意味が判らない、回答になってない言葉だった。
「会長は、『偶然』を『必然』にできるんですよ。これが、質問への回答です。」


「ええ〜と。『13番』か。」
 対戦テーブルが張り出され、周囲に人が集まっていた。総出場選手は96名。
 町田テーブル席は『13番』。
「私は〜、あ! 『29』ッス!」
 『茅ヶ崎めぐみ』は29番。
「げ、『12』って、最悪。」
 『香田晶子』は『12』。偶然にも、町田の隣の席であった。
「お! いいねえ、俺たち運命共同体って感じ!?」
「隣にならないように座ろう……。」
 そそくさと人混みから抜け出す晶子。
「『1』、か。うん! いいかも。」
 小金井結花は『1番』。なんとなく、幸先がよさそうな数字だ。
「『48』って、一番最後か?」
 関内辰之助は『48』。見事に全員が、初戦で当たらずにバラけることができた。
 が、
「『Ooki Tsutomu』……。」
 関内は対戦相手の名前に見覚えがあった。普段使わないローマ字表記で、ぱっと見わかりつらかったが、
「……大木!!」
 大木勉(つとむ)。生徒会書記の大木だ。『48』の席に目をやると、既に彼がデッキをシャッフルしていた。
「先輩、初戦から大木さんですか?」
「そうらしい。はっ! まるで出来レースだな。」
 関内は、口は笑っていたが、目は眉間にしわを寄せていた。たとえ自分のマッチだけだったとしても、『生徒会の思惑』どおりになってしまったのだ。内心、面白くなかった。
「……先輩。」
 小金井が肩を叩く。彼女に肩を触れられるとなぜか落ち着く。
「先輩、肩が張りすぎです。ね? 『楽しみ』ましょうよ。」
「……そうだな、『偶然』を気にしすぎだよな、俺。」
 はは、と笑いながら48番席に向かう関内。しかし関内の口から出た言葉と、大木の言葉が、結花の中で重なる。

『 会長は、『偶然』を『必然』にできるんですよ。 』
『 『偶然』を気にしすぎだよな、俺。 』


 ほぼ全員が席に着いた。各々の席で、簡単な挨拶が交わされるタイミングだ。

「宜しくおねがいします。『勝川 純』です。」
「ああ、よろしく。町田速人です。」
 町田の対戦相手。丁寧に名前紹介をしていた。
 小柄な青年であったが、肌は健康的に焼けており、爽やかな感じを受けた。

「ども、宜しくお願いしま〜す。」
「こちらこそ、大会初めてなので……宜しくお願いします。」
 香田晶子の対戦相手は、対戦表には確か『Tsukisima Kouichi』と書いてあった。
(月島……幸一、って書くのかな?)
 ニコニコと笑顔の、色白の青年。しかし、隣から見ていた町田の第一印象は、
(細い目を、さらにニヤ付かせたような……好かんな。)
 笑顔に裏があるような、そんな、無理に作っている笑いが気に入らない。

「……。」
「……。」
 両者とも無言で席に着いた、29番卓。『茅ヶ崎しのぶ』は実は、初対面の、特に前情報のない、知らない相手にはてんで弱い。
(な、何を話せばいいんだろう〜(汗)。)
 下を向きながら、わしゃわしゃとデッキをカットしている。あれだけの『格好』をしていながら、人前で上がってしまう彼女。
 そんな彼女の対戦相手は、『Asou Shuuei』(麻生秀英)。肩幅があり、半袖から覗く二の腕には、しっかりと筋肉が付いていた。身長も大きい。ラクビーや柔道といったスポーツが似合いそうな体つきであった。
 小さな茅ヶ崎が、さらに小さく見えてしまう。

「宜しくお願いします。小金井です。」
「ん、宜しく。」
 小金井の対戦相手は、既にぱたぱたと、7枚きりを行っていた。挨拶の際、大して相手の顔を見ないまま。
「ええと……クロサキさん、でよろしいですか?」
「ああ、あんたは小金井結花さんね。オッケーオッケー。」
 やっぱり、小金井の顔を見ない。デッキを切ることに集中しているのか。
「『ヒジリ』さん、って、珍しいお名前ですね。」
 ぴたっと、対戦相手のデッキをシャッフルする手が止まった。そして「ふぅー」っと、溜め息に似た長い息を吐いた後、
「俺、自分の名前、嫌いなんだ。」
 と、ここで初めて小金井の顔を見て、そしてまた、デッキシャッフルを再開した。
(……なんか…・・・気難しそうな人。)
 小金井結花も、デッキを切り始めた。しかしそれは、いったん中断されることになった。
「あ、忘れてた。」
 クロサキヒジリ(黒崎 聖)が、突然に手を差し伸べた。握手のつもりのようだ。
「あ、はい。」
 結花も、それにつられて、右手を差し伸べた。

「……ん。」
 すっと、麻生が手を伸ばす。彼の手も、体に見合って大きい。
 これが握手のサインと直ぐ気付いた茅ヶ崎しのぶも、無言で手を差し伸べ握手した。

「よろしくね。お姉ちゃん、美人だなあ。」
 握手をしながら、月島耕一が香田に語りかける。
(……彼も、『やつ』と同じ人種、か。)
 はぁ。と軽くため息をつきながら、月島と握手していた香田。そろそろ手を離したかったが、月島がしっかりと手を握っている。笑顔は絶やさずに。

 自然に伸ばされた手に、町田は自然と握手していた。しかし町田は、ふと違和感を感じた。
(試合前に握手なんて変わってるなあ、隣も。この辺の、ご当地マナーか?)
 しかし町田の予想は、MTG同好会として最悪のパターンで裏切られることになった。
 

町田と今、握手している『勝川純』が。
香田と今、握手している『月島耕一』が。
茅ヶ崎と今、握手している『麻生秀英』が。
小金井と今、握手している『黒崎聖』が。
 全く同時に、同じ自己紹介をした。

「「「「どうも。生徒会のものです。」」」」

 
「そんな馬鹿なことがあってたまるか!!」
 テーブルを両手で叩きつけ、関内が立ち上がった。一番後ろの席であったため、全員の挙動を見ることが出来ていたのだ。
 しかし、目の前の大木からの告発と、先ほどの一斉の自己紹介。全員が生徒会と当たったことは、揺ぎ無い事実であった。
「『ありえない』なんてない。それがこのゲームですよ? ありえる可能性は、『常にある』んです。」
 悔しさから歯軋りを始めてしまった関内。さも、この結果が当たり前の様に振る舞う大木。
「……やっぱり、生徒会が、大会を裏で操っているんじゃあないだろうな!?」
「それは無い。」
 2回目の否定。本当に違う。大木の目はそう訴えている。
「2度も言わせるな、関内。」
 大木は本日、同じ台詞を2回述べることとなった。
「会長は、『偶然』を『必然』にできるんですよ。……私も、実のところ半信半疑ですがね。会長が思えば、大体叶うのさ。」
 

 開会式は終わった。そしてヘッドジャッジが、ゲームスタートの宣言をした。
「それでは! 第1回戦開始してください!!」
 ゲームが始まった。この組み合わせは、本当に『偶然』なのだろうか!?
 本当に、生徒会はこの大会に『絡んで』いないのか!?
 さまざまな憶測が巡るが、事実、ゲームは始まってしまった。
 しかし彼らの目的……同好会の目的は、何も変わらない。
 『勝って、部を存続させること。』
 同好会の、一番長く、一番熱い日が、スタートした。





〜次回予告〜

 月島が操る《グルールビート》の猛攻!
「ふふっ! 来い!! 《炎樹族のシャーマン》!!」
「……ダメ! クリーチャーのパワーが違いすぎる!!」
「ほらほら! 《ブリキ通りの悪党》プレイ!! 《十手》が割れちゃうよ!」
 関内から預けられた《十手》。それのパワーを十分に引き出せないでいる『香田晶子』。
「……関内先輩、ごめんなさい! やっぱり私……!」
 彼女がとった行動とは!? 関内への謝罪の意味は!?
 

次回、GatherFriends〜MTG青春日記〜 大会編 11話。

『香田vs月島!! 
 大自然の猛攻! 振り払え!! 第3の《光》!!』

に、チャンネルロ〜ック(違!!


ノシ

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