作者注;作中の大会は、
『コールドスナップ発売前』に始まっています。
フォーマット等々、現在とは異なっていますので、
ご了承ください。
(しかも駆け足です。もうなんというか、いろいろ無理してます。スンマソン。)




「相性は、8:2でこちらよりですよ。」
 黒崎聖の挑発。
 ダイスを転がしながら、黒崎は小金井結花に話しかけてきた。
「あなたのデッキでは、僕には、勝てませんよ。」
 不敵な笑顔。やはり黒崎も、小金井のデッキ……もとい、同好会のデッキ全部を把握しているだろう。
 黒崎の投げたダイスは、「6」の目を上にして止まった。六面ダイスでは、これ以上の目はありえない。
「先攻、頂きますよ。」
「まだ、投げていませんよ、私。」
 お借りします、と一言断って、結花はダイスを投げた。
「フン。6より大きい目は出ないよ、そのダイスは。」
「……。」
 しかし結花の投げたダイスは、同じく「6」を上にした。
「6、は出ますね。」
「……。」
 小さく舌打ちし、黒崎が再度、ダイスを投げた。「4」だ。
「お借りします。」
 そして結花の投げたダイスは。
「『5』ですね、先攻いただきます。」 
 結花と、生徒会の黒崎聖の卓は、フューチャー席であった。テーブルの横にはジャッジが座り、今回の戦いについては全て記録に取るというのだ。
「もちろん、両者から同意をいただけない場合はフューチャーしませんが、いかがします?」
 試合前のジャッジの確認。これに、二人は了解した。
 先手、マリガンチェック中。
 結花は手札を見て、そして、
「大丈夫、マリガンなしです。」
 マリガンしない旨を伝えた。対して黒崎は、それを聞いた直ぐに、マリガンを宣言した。
「先ほど……8:2でこちらが不利といってましたね。」
 相手が切り終わったデッキをシャッフルしながら、結花が黒崎に聞いて来た。
「……ああ。」
「でも、私思うんですけど。」
 シャッフルが終わり、黒崎にデッキを返す。
「……『2』あれば、十分と思いますよ。」
 小金井結花の、のんびりとした、楽観的な口調。
(……フン、くえねえなあ、この女。)
 また彼が、小さく舌打ちをした。彼の癖なのだろうか。
「キープ。」
 黒崎が手札をキープした。小金井結花の、デビュー戦が始まった。
「では、宜しくお願いします。お互い、楽しみましょう。」
 結花は、無垢な笑顔で『楽しもう』といい、そして、《繁殖池》をタップ状態で場に出した。

********************************

「……ん。」
 麻生秀英は、手札から《神の怒り》をプレイした。がそれを、茅ヶ崎しのぶは許可しなかった。
「《差し戻し》ッス。」
 しかし麻生も、それに対して打ち消しをプレイする。
「……立っている《島》から……。《呪文嵌め》で。」
「う、それは……通ります。」
 しのぶは、自分がコントロールしていた《深き刻の忍者》と《闇の腹心》を墓地に置いた。
 麻生秀英のデッキは『青白パーミッション』であった。正直、彼の体つきからはイメージし難いデッキではあった。
 対する、茅ヶ崎しのぶは『スノーストンピィ』。白青黒の三色ビートダウンであった。軽量打ち消しでテンポを奪い、《深き刻の忍者》と《闇の腹心》で手札補強、そして優良な軽量生物でビートダウンするデッキだ。
 その手札補強の要である2体を、神の怒りによって流されてしまった。が、
「《勇丸》と、《闇の腹心》2号、召還っす。」
 フルタップ状態の麻生には、それらを打ち消す余力は無かった。そしてさらに、彼のライフは残り「4」であったのだ。
「……。」
 麻生は、トップデッキに全てをかけた。なぜなら今、彼の手札には、あの生物2体をどうにかする方法が無いのだ。もう1回、《神の怒り》を引くことが出来れば最高ではあるのだが。
 が、彼が引いてきたのは《潮の星、京河》だった。手札には土地がある。
「……。島、出して、《潮の星、京河》」
 意を決して、《京河》をプレイした。茅ヶ崎の土地は《神聖なる泉》と《地底の大河》が立っており、打ち消される可能性があったのだが。
 が、茅ヶ崎は京河を出させるしかなかった。打ち消せなかったのだ。
「うひゃあ、マズイっすね。」
 スノーストンピィは、ファッティに弱い。手に負えない生き物が出た場合、取り除く方法が少ないのだ。かつ、《京河》という『除去してもオマケが付いてくる』ものも心底苦手だ。
「仕方ないッスね、こちらのターン。」
 《闇の腹心》を指差し、
「めくるッスね。」
 麻生も了解し、デッキのトップがめくれた。
「……あ。」
「……え。」
 めくれたのは、茅ヶ崎しのぶが最も気に入っているカード。
「……6点、ライフ支払うッスけど……。」
「……。まけ、ました……。」
 茅ヶ崎しのぶは、めくれたカードを眺めていた。めくれただけで、対戦相手が投了した、魅惑のカード。
「……全然、忍んでないッスね、墨目さん。」
 半笑いで、しのぶは《鬼の下僕、墨目》を眺めていた。

********************************************

「教えてもらおうか、今回のカラクリを。」
 《寺院の庭》をアンタップインし、《極楽鳥》をプレイした。
「カラクリなどないさ、しいて言えば…。」
 返しに、大木がプレイしたのは、《ウルザの塔》。先ほどの《ウルザの魔力炉》に続き、2枚目の『ウルザランド』だ。
「会長が、そう『望んだ』からだな。」
 そして、《イゼットの印鑑》をプレイ。これで次ターンに色マナが確保された。
「また『会長』か。」
 ドローをする関内。あまり芳しくなかったのか、渋い顔をした。
 しかし《森》をプレイすると、大木の《印鑑》に対してスペルを詠唱した。
「朽ちろ、《化膿/Putrefy(RAV)》だ。」
 大木が使用する『ウルザトロン』は、マナを攻められると苦しいはずだ。
「言っただろう、関内。」
 しかし対して動じることも無く、大木は印鑑を墓地に置いた。
「会長は、『偶然』を『必然』に変えるんだ。」
 大木は、自ターンのドローをした。
「会長は、自分にこう言った。」
 ニヤリ、と笑顔になり、大木は土地を置いた。
「『今日はよく、揃う日ですよ』とな。《ウルザの鉱山》。」
 サクッと、3枚の『ウルザの』が揃った。そして、
「《印鑑》出して、そして《降る星、流星》だ。」
 一気に、伝説の龍を召還したのだった。
「会長の『予見』を教えてやるよ。」
 先ほどの関内が使用した《化膿/Putrefy(RAV)》は、完全にミスプレイングだった。あせりすぎだった。
「『関内君、彼は今日、小さなミスで、勝てない試合が多いだろうね。』」
「……な、なに?」
 大木はさらに話した。めがねを中指で直しながら、1回戦の『勝敗』について語り始めた。
「『町田速人君、茅ヶ崎しのぶ君。両名は、たぶん勝つだろうね。強いし。』」
 淡々と、会長からの伝言を伝えるように、関内に語った。
「『そして関内君と、香田晶子君。あと、小金井結花君。彼らは、勝てないよ。』とな。会長は既に、お前たちの負けを予見しているのさ。」

**********************************************************

「よっしぁぁぁっ!!」
 香田晶子が、無意味に気合を入れて引いてきたカード。それは、場を一気に逆転できるカードだった。
「《栄光の頌歌/Glorious Anthem》!」
 晶子が、『2枚目』の《栄光の頌歌》をプレイした。
「一気にアタック!!」
 実質、ブロックされない状態であった《ヴェクの聖騎士》を除いて、月島は、自分のクリーチャーを全て盾にするしか、生き残る術は無かった。
「残ライフは!?」
 ちょっと(どころか、かなり)興奮気味な晶子。
「の、残り、2だ。」
 その勢いに、完全に呑まれた『月島』。逆にすっかり、おとなしくなってしまった。
「よ〜し! ターン終了!」
 先ほどのブロックによって、月島のクリーチャーは全滅。しかし、結花のライフも『残り4』であった。
「トップデッキ勝負、だな。」
 月島の手札は0枚。このドローで、《血の手の炎》を引かないと、負ける。
 が、既に墓地に1枚の《血の手の炎》。引く確率は非常に低い。《黒焦げ》ではダメなのだ。
「さてどうするか。」
 月島はデッキに手をかけ、カードを引いた。
(月島君、今日はトップデッキが強い日ですよ。)
 試合前、会長から電話越しに言われたあの言葉を思い出した。
 そして、月島は、引いてきたカードを見て、驚いた。
「……怖いな、あの人は。」
 静かに、月島は引いてきたカードを晶子に見せた。
「《血の手の炎》、対象はアンタだよ! 同好会!!」

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〜次回予告〜

「自分も相手も楽しくなくちゃ、私、満足できないんです。」
「……で?」
「欲を言うなら……。」
 小金井結花は周囲を見渡す。フューチャー席の周りには人だかりが出来ていた。
「この人達みんな、楽しくなったら、最高に幸せだとは思いません?」 

 会長の予見は、当たってしまうのか!
 小金井結花の運命は!
 そして、興奮しすぎた香田晶子は、普通の女子高生に戻れるのか!?

「さらに欲を言えば……。会長さんにも、楽しんで欲しいんです、私。」

次回は何時か。

コメント

nophoto
孔迷
2006年11月16日6:34

アップできるようにはなりましたか。
色々お疲れ様です。

小説の方も、スタンダードに追いつくのが(追いつけるのか?)
大変でしょうけど、気にせず好きなように書くのが一番だと
思いますよ〜。

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