※先に、第11幕 その4を見てください。





「乾杯〜〜っ!!」
 ここは学校、『MTG同好会』の部室だ。
 いつもデュエルで使われているテーブルを中央に囲み、部員全てが集まっていた。

・部長 関内辰之助
・副部長 香田晶子
・部員 町田速人
・部員 茅ヶ崎しのぶ
・部員 小金井結花

 テーブルにはスーパーで購入してきたお菓子類と、ジュースとお茶が置かれていた。そして壁にかけられていた横断幕には『ありがとうMTG同好会』と書かれていた。
「正しくは、『乾杯』じゃなくて『完敗』っすけどね。」
「誰が上手いことを言えとっ。」
 茅ヶ崎のボケに、香田が答える。茅ヶ崎が同好会に入るのを一番嫌がっていた香田だったが、いつの間にか、茅ヶ崎と一番親しくなっていた。
 同好会は、その後も勝ち進むことが出来なかった。5人が5人とも平々凡々な成績であった。
 小金井も、あのあと負けた。結局、5人の中で一番成績が悪い結果となった。
「でも、結花の戦いって、見ていて本当に面白い。」
 香田が結花にいった。
「そおっすね。みているこっちも、ヒヤヒヤなんすけどね。」
 茅ヶ崎しのぶも、香田の意見に乗った。
「何かしら、逆転のカードを握っていたり。いっつも、対戦相手にすんなり勝たせないっていうんすかね。」
「特に、1戦目はマジすごかったな!! マジで!」
 笑いながら町田。
「あんときの黒崎の顔! すっげえ笑ったぜ!」
「……うん。」
 しかし小金井は、落ち込んでいた。そのあと勝てなかったことを悔やんでいるのか。
 結局、その大会の優勝者は、負け無しの黒崎だった。1度引き分けた後、ずっと勝ち続けた。最後、1人だった全勝者を倒し、見事優勝した。
「唯一、優勝者に負けなかったんだ。そのあたりは、誇った方がいいと思うけどな。」 
 関内のフォロー。
「そうよ結花。優勝者と分けたんだから。……ほら、今日は楽しもうよ!」
「結花さん、オレンジジュースとかどおっすか?」
 空になっていた結花の紙コップに、茅ヶ崎がジュースを入れてくれた。
「そうね、晶子、しのぶちゃん。わたし落ち込みすぎていた。」
 ぐっと、結花はオレンジジュースを一気に飲み干した。そんな結花たちをみて、関内が笑った。
「お、いい呑みっぷりだな。」
「女たちは女たちで楽しそうだ。男同士で飲もうぜ。」
 そうだな。コップを手に取り、関内はお菓子をつまみ始めた。

 その時、扉が開いた。
「パーティ中失礼、同好会諸君。」
 メガネを中指で直しながら、大木が入ってきた。

「電車がおくれてさ〜 結局門限に間に合わなかったのよ。」
「あ〜、大会の日っすね。」
「1時間くらい送れたわね。」
「なんでも、若い男女二人組みがホームから落ちて轢かれたらしいの、あの日。それで電車遅れたんだって。」
「え〜。気味悪いね。」
「そおすか? なんかミステリーって感じでわくわくするっすよ自分。」
「え〜。そう?」
「自殺か? 事故か? もしくは他殺? はたまた、誰かの陰謀か?! って。」
「……本の読みすぎね。」

「んでよ、関内。誰か脈あり、なのか?」
「なっ・・・お、お前こそどうなんだ?」
「ん、おれは晶子ちゃんを未だにねらってるんだぜ。」
「振られただろ一回。」
「でも、そんなん関係ね〜 てな。」
「……時事ネタは風化するぞ。」

「お、このお菓子美味しい♪」
「このコーラ、結構いけるっすよ。」
「……しのぶちゃん、このコーラのメーカー、全然知らないんだけど……。」

 まー、こーなることは、わかっていたけどねー。

*******************************

「正式に、活動停止する部活動が決まったので、『親切に』連絡に来てやったぞ。」
「……こりゃ『親切に』どーも。」
 ちゃっかりと、パーティの輪の中に入り込み、ジュースとお菓子をご馳走になっている大木。
 対面には、本同好会長の関内。
 大木は一枚の紙を取り出した。A4の紙には、左上に生徒会長の印と、学校校長の印が押してあった。
 集まった5人全員が、その紙を見た。


 『活動停止する部活動について』
 以下の部活動、同好会を、活動停止処分とする。

 ・ マンガ読書同好会
 ・ 超常現象解明同好会
 ・ カバディ部

     以上


「……あれ?」
「え?」
「ん?」
「ほえ?」
「……おい大木。これミスプリントじゃないのか?」
 5人が5人、それぞれリアクションを取った。
 関内が大木に聞いたが、大木は首を横に振った。
「間違いではない。コレが会長の決定だ。理由はよく分からないが、会長はMTG同好会を残す、と言い出したんだ。」
「…ってことは…?」
「この解散パーティが、無意味になったってことだな。」
 アメリカンジョークよろしく 大木が言った。

 その後、解散パーティは続投記念パーティとなった。
「仕事が残っている!」 
 といっていた大木も、町田がムリヤリ部室に残し、パーティに参加させた。
 
*********************************

「疲れたな。」
 学校の外、正門前。
「騒ぎ疲れました。」
「片付けに疲れたよ。」
「でも、楽しかったっす。」
 祭りの後。既に暗くなった外。
「また、みんなでMTGできるんですね。」
 皆うれしそうだった。
 MTG同好会がなくなっても、MTGは続けられる。ショップに行けばデュエルスペースがあるし、長めに電車に揺られれば、大会だって開かれている。MTGをするだけであれば、そうすればいい。
 でも、やっぱり、この5人でゲームしたいし、集まって話もしたい。
 学校で、公認でMTGが出来る場所が欲しかった。なくなって欲しくなかった。
「……ま、同好会が無くなっても、隠れてやっていたかもなぁ。」
 町田が口を開いた。多分、5人とも同じ考えだったのだろう。しかし肩身が狭い思いをすることは目に見えている。
「ここでできる、ってことに意味があった。」
 結花が学校を見た。既に教室は消灯していた。職員室と体育館に明かりがともっていただけだった。
「……これからも、不束者ですが宜しくお願いします。皆さん。」
 みんなの方に向きなおり、ぺこりと、小金井結花が頭を下げる。
「ちょ・・・・・・結花!? 『不束者』はおかしくない!?」
 素早く、香田晶子が日本語に訂正を入れた。
「そーなんすか? 『ふつつかもの』って気のきかない人。行きとどかない者って意味っすから。」
 茅ヶ崎しのぶが答えた。
「晶子ちゃんの『不束者』って、どういったときに使うのか教えて欲しいなぁ。」
 ニヤニヤ笑いながら、町田速人。

 笑みさえこぼれる4人のやり取りを1人見ていた、関内辰之助。
「なあ、みんな。」
 4人に声をかけた。皆、関内を見た。

「実は俺・・・・・・。ちょっと、MTG止めようと思うんだ。」
 


〜〜〜〜〜〜次回(?)予告〜〜〜〜〜〜〜〜
 関内の引退宣言。
 ばらばらになっていく部員たち。
 
 部活だけでなく、心までばらばらに分かれてしまうのか?
 
 その時、またしても生徒会から送られる刺客!
 今度の刺客は・・・・・・海外から!?
 氷の国からやってきた、クールビューティな彼女の正体は!?
「Hi! シノーブ!」
「エマ!」

次回に続いたら奇跡。

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